税理士松尾ブログ
数字を経営に活かす3ステップ
2024-06-17
3月決算5月申告のお客様の申告業務が終わってひと段落となる6月。
弊社6月決算につき、たいていは弊社の経営計画書を仕上げる1か月となります。
計画書データと毎日毎日にらめっこして6月を過ごします。
本当に本当に有難いことに、過去10年間で200社を超えるお客様と新たに顧問契約を頂戴しておりますが、今期の1年間は、その中でも一番多くの契約を頂戴した年度でもありました。
そのすべてがいわゆる「紹介」で、「事業承継を契機に」もしくは「月次決算プラスご提案を」というケースがほとんどになります。
事業承継に関しては、税制改正にとって毎年末の税制改正大綱と同様に重要な位置づけとなる「骨太の方針」において、下記のような報道がありました。
要件を満たせば贈与税負担がゼロで株の移転ができる新事業承継税制ですが、その要件が緩和される方向で検討されているとのこと。
ただ、内容はと言うと、株の贈与を受ける人が贈与を受ける時点で3年以上役員である必要がありますが、その要件を緩和する方向。
とのことですので実務的にはほとんど影響がないと感じます。
やはり問題は「この制度を使うかどうか」にあり、今一度、この税制の大枠と主なメリットデメリットを抜粋すると下記の通りとなります。
<概要>
・R8.3.31までに特例承継計画(A42枚のシンプルなもの)を提出
・R9.12.31までに贈与を実行
・他の要件を満たせば贈与税の全額が猶予
<メリット>
・贈与税負担なしで株の移転が可能
(後継者が確定しており、株価が高い、又は時間の余裕がない場合に特に有効)
・税務上の株価を贈与時点の価値に固定できる
<デメリット>
・猶予の取消要件に該当すれば延滞税とともに本税を負担する必要がある
・贈与後、相続が発生した時点で、納税か猶予の延長かの選択を迫られる
・贈与後、相続が発生した時点で、株も含めて相続税を再計算するため、事業に関係のない相続人の相続税率に影響する
制度の創設以来、何度かの改正が加えられていますが、贈与の期限である「R9.12.31」という日付が改正の検討課題に上がったことはありません。
弊社も、「贈与税の納税猶予は積極活用」という基本方針であり、承継のスキームを考える際には必ずといってもいいほど選択肢に上がります。
事業承継は百社百様。
贈与の実行期限まで残り3年半という中で、改正の動向もにらみつつ、引き続き、実情に合わせた承継方法を共に探っていければと考えております。
月次決算に関しても、現在は会計ソフトが非常に優秀ですし、毎月早めに試算表が欲しい!というトップの指示があれば、月次で試算表をタイムリーに出せる態勢にすることは十分に可能です。
ただ、試算表が早めに上がってきたとして、次のステップとしてそれが使えるかどうか?ということになると、大きなポイントは「在庫」を月々でどう把握するか、という点になります。
税務調査において「在庫」の確認は必ずなされます。
順番としては、まずは「売上にもれがないか?」というところからですが、その次は決まって「在庫」の確認に移ります。
なぜか?
会社にとって一番大きな費用は?と考えた場合、「人件費」、ではなく、「原価(仕入、外注)」が一番金額が大きな費用である、というケースが多いと思われます。
その原価は、
1,期首の棚卸資産(在庫)
プラス
2,その期の仕入、外注などの原価
マイナス
3,期末の棚卸資産(在庫)
で計算されます。
「1」は前期のものですし、「2」がもれることはまずない、となれば、一番大きな費用である原価は「3」の期末の棚卸資産(在庫)によって確定されることとなり、当然に大きな着眼点となります。
在庫とは期末に残っている商品というイメージもありますが、「計上されていない売上に対応する原価」という意味合いもあります。
税務調査の側面はさておき、期末なり各月末の在庫によって原価が確定するということは、いまの粗利益の率も確定することとなり、経営管理上も重要です。
黒字を継続できている企業に共通する事象として、決算の先行き管理を行うことができている、という点があります。
建設業にせよ販売業にせよ、月次報告を出来るだけ早く実現するために期中においては概算の粗利益率にて業績を把握しつつ、やはり半期や第三四半期には実際の在庫による粗利益率で業績を把握することが重要です。
在庫の額がある程度把握できれば、今度はその実額を踏まえ、
・いまの資金調達の方法が適切かどうかを判別できる
・必要売上高も計算できる
・確度の高い予算も作成できる
といったように、在庫把握の一点から経営課題を多岐に検証できる体制へとつながります。
ステップ1:試算表がタイムリーに上がる(経営状態が分かるようになる)
ステップ2:在庫把握の一点から、様々な分析や判断が出来る(数字を使えるようになる)
ステップ3:決算先行き、資金繰り先行きが把握可能、さらに「予算」に魂が入る(経営を見通せるようになる)
という3段階で、地域の中小企業の皆様に伴走していきたいと思います。
地元の小学生向けに、毎年末には「お正月講座&しめ縄づくり体験」を開催しています。
年末の講座用の稲わらを今年は自分たちの手で植えてみよう、ということで、友人たちとやって参りました。
いや~、重労働。昔の人はすごい。
しめ縄専用にと考えていますので、お米の種類は「もち米」です。
さて、無事に講座に使えるか?ハラハラながらもワクワクです。
円安は続くか?
2024-06-04
報道では上場会社を中心に、円安や値上げの効果で好決算の発表が続いており、実際に税収も増えております。
しかし、中小企業や一般消費者にとって、円安は基本的には悪影響が多いと思います。
今の円安をどの程度まで許容するのか、具体的な政策として打ち出しにくいのは分かるものの、そもそも是正すべきと考えているのか、政治の役割としてのメッセージ性が弱いのが非常に気になっております。
そんな中、少し前の話にはなりますが、円安是正の観点から「リパトリ減税」が検討されている、との話がありました。
海外子会社が利益を計上するものの日本国内に還流させない、という事態があるため、
海外子会社から本国へ還流時の税負担を軽減させるものです。
そもそも、円安を人為的に是正するためは2通りが考えられます。
1,為替介入
外貨準備でもって円を買うという取引ですが、財務省の資料によると、外貨預金は約25兆円。
それに対して先日、実は為替介入してましたということで公表された介入額は約10兆円。
外貨準備高から言っても、なかなか介入を連発しにくいのが現状です。
2,利上げ
こちらに関しては、国民経済や中小企業に甚大な影響があるためなかなか大胆には踏み切れない、、、。
ということで円安基調はしばらく続きそうと考えておりますが、先のリパトリ減税の他、これ以上の為替水準を許容しないため施策とメッセージがどこまで6月の骨太の方針に盛り込まれるのか、注視をしています。
円安の影響もあって、今年に入ってからというもの、中小企業の業況にさらに厳しさが増している感があります。
お客様にも、弊社内でも、
・さまざまな不確定要素に耐え
・経営をつなぎ雇用を守っていく
ためのバロメーターとお伝えしているのが「自己資本」の「金額と率(自己資本比率)」になります。
貸借対照表右下の下から2番目の数字です。
キャッシュ量は、
・借入を増やしたり
・回収サイトを早めたり
・支払いサイトを遅らせたり
すれば一時的に増加させることはできますが、自己資本は利益を積み重ねない限りは増加しません。
貸借対照表の左側には、自社の「資産リスト」が並びますが、その内の何%が自分のもの(税引き後利益の積み重ね)か、を示すのが自己資本比率になります。
先日、中小企業庁から「令和5年中小企業実態基本調査速報」という統計が公表されていますが、そのアンケート資料によると、中小企業の自己資本比率の平均値は「41.71%」。
弊社の月次試算表でも、その表紙に、まずは50%を目指しましょうと記載させて頂いております。
そして社長ご自身が株主なのであれば、自己資本の額は社長ご夫婦にとってもう一人の子供なんですよ、と。
地域経済を守っているのは中小企業。
円安・人材不足・資源制約など厳しい経営環境を克服するためにも、自社の自己資本比率の定点観測を欠かさず、予算実績管理、月次業績管理を進めていければと考えております。
(ご参考)
以前にフリーアナウンサーの清水健さんとYouTubeで対談させて頂いた際にも自己資本のことに触れております。
6月初旬。
夕方になると「寒っ」と感じたら認識即行動ですぐに焚火とバーベキューの巻。
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