税理士松尾ブログ
医者と税理士は若い方がいい(H30とH31の税制改正大綱を読み比べてみる2/2)
2018-12-23
毎年公表される税制改正大綱には、
その最後に
次年度以降も引き続き検討する項目が列挙されます。
・H30税制改正における引継ぎ事項
・H31税制改正における引継ぎ事項
を比較してみると、
・実現した項目
・再度引き継がれた項目
・新しく引継ぎとして出てきた項目
が良く分かります。
前回のH30税制改正において「検討事項」として挙がっていた項目を早速みてみます。
1,年金課税
年金制度改革の方向性も踏まえ、課税のあり方を引き続き検討する
⇒H31も同様に引継ぎ
2,金融所得課税の一体化
投資家が多様な商品に投資しやすい環境を整備する視点から引き続き検討する
⇒H31も同様に引継ぎ
3,小規模企業に係る税制のあり方
個人と法人成り企業に対するバランスを図るための外国の制度も参考に、
控除のあり方を全体として見直すことも含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する
⇒H31も同様に引継ぎ
4,子供の貧困への対応
ひとり親に対する税制上の対応について平成31年度税制改正において検討し結論を得る
⇒これ、今回公明党さんが最後まで主張していたやつですね。
実は昨年から引き継がれていたのが分かります。
今回(H31)でも住民税の非課税枠が拡大されたものの、
「H32税制改正において検討し、結論を得る」となりました。
5,個人事業者の事業承継
その承継の円滑化を支援し代替わりを促進するための枠組みが必要
⇒H31税制改正において対応されました。
事業用の土地建物に係る相続税・贈与税の納税を猶予するというもの。
したがってH31税制改正大綱における「検討事項」からは消えています。
6,医療に係る消費税のあり方
医療機関の仕入れ時の消費税負担等に配慮し、H31税制改正で検討、結論を得る
⇒今回(H31)で、診療報酬の配転方法の精緻化、医療関係器具の特別償却制度の拡大といった
措置が取られました。
したがってH31税制改正大綱における「検討事項」からは消えています。
7,国境をこえたサービス提供に対する消費税の課税のあり方
課税の対象とすべき取引の範囲及び適正な課税を実現するための方策について引き続き検討
⇒こちらは今回(H31)では、経済の国際化・電子化への課税上の対応は適正な課税を確保するための方策について引き続き検討を行う、と表現されました。
8,原料用石油製品等・・・割愛(H31も変わらず検討事項として記載)
9,事業税における医療関係サービスへの軽減税率等・・・割愛(H31も変わらず検討事項として記載)
10,電気供給業等への外形標準課税・・・割愛(H31も変わらず検討事項として記載)
11,ゴルフ場利用税のあり方・・・割愛(H31も変わらず検討事項として記載)
12,民法における成年年齢の引き下げに伴う、税制上の年齢要件
民法に合わせて18歳に引き下げることを基本として検討をおこない、結論を得る
⇒こちらは相続時精算課税制度の適用年齢・NISAの適用開始年齢の引き下げなどで
対応されています。
今回(H31)では検討事項に挙がっていません。
で、H31で新しく「検討事項」で上がってきたものは。。。ひとつ。
自動車関係諸税について
自動車を取り巻く環境変化の動向等を踏まえ、その課税のあり方について中長期的な視野で検討をおこなう。
と新しく記載されました。
巨大産業、自動車産業をめぐっては今年も様々な動きがありました。
トヨタ自動車とソフトバンクとの連携。
カルロスゴーンの逮捕。
「クルマ」の枠組みをこえ、「移動手段」として新たな時代の到来を予見しての一文でしょうか。
参考記事:https://www.businessinsider.jp/post-180756
いずれにしても、
「検討事項」として
・新たに出てきた項目が少ないこと
・来年以降も同様に引き継がれている項目が多いこと
から、今後は何か目新しいものが登場するよりも
既存の税制(特に事業承継税制)にマイナーチェンジが
繰り返されるような気がします。
実務的には、その「マイナーチェンジ」へのキャッチアップが大変ですし、
選挙イヤーの来年の結果次第ではまた目新しいものが出るかもしれません。
ある経営者は言いました。
「医者と税理士は若い方がいい」
それだけ目まぐるしく変わるという意味だそうですが、
その期待を裏切らないように頑張ります。
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