税理士松尾ブログ
インボイス導入ガイド⑥~インボイス発行事業者の義務とは~
2021-08-19
テーマ:消費税
インボイスを発行する事業者に義務付けられることとしては、
・インボイスを交付する義務
・記載事項に誤りがあった場合には修正したものを交付する義務
があります。
とはいえ、
・自動販売機での購入のように領収書や請求書が発行されないケースや
・スーパーなど不特定多数の個人を相手とした業種
もありますので、その場合にはインボイスの交付義務が免除されたり適格簡易請求書で足りるケースも措置されています。
現時点で課税事業者か免税事業者かに応じて、それぞれにやるべきことを検証し、対応すべきは対応し、
その後は請求書や領収書の様式をR5.9.30までに整えれば、過大な混乱は防げると思います。
ただ、ふと我に返って、この場合はどうなるのだろう?
と思ったのが「口座振替」のケースです。
税理士や弁護士などの士業、そして定額制のサービスの場合、最初に契約書を交わしてその後は請求書や領収書を発行しないケースが多くあります。
実際、弊社でも原則として月々の料金を頂戴する場合は口座振替でお願いをしております。
この場合でも原則どうり「インボイスの記載事項」に立ち戻って考えなければなりません。
<インボイス(適格請求書)の記載事項>
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称と登録番号
②取引年月日
③取引内容
④税抜き金額または税込み金額を税率ごとに合計した金額
⑤④に対する消費税額および適用税率
⑥請求書の受領者の氏名又は名称
少なくともこの記事を書いているR3年現在も有効な契約については、その契約書に①の「登録番号」の記載はないと思いますし、
⑤の「適用税率」の記載もないケースが多いのではないか、と考えられます。
②については引き落とされている通帳や、毎月振り込みの場合には振込金受取書などによってカバーできます。
③については現行の契約書に記載されているでしょう。
④については、現行の契約書における記載のされ方について確認が必要です。
⑤については、特に賃貸借契約書で昔からのものなど、適用税率の記載の有無がポイントになります。
⑥は契約書に記載されていると思います。
上記のようにインボイスとして必要な「記載事項」に立ち戻って検証していくこととなります。
もし不足の記載事項があるようであれば、
・契約書を巻き直す
・毎回、記載事項を網羅した請求書や領収書を発行するようにする
・不足の事項を改めて通知してもらう
の対応が必要となります。
お店を賃借して多店舗で展開されている業種などは時間と手間がかかるかもしれません。
インボイス導入ガイド⑤~適格請求書の様式~
2021-08-19
テーマ:消費税
インボイスは「適格請求書」と言いますので、記載すべき事項が決められています。
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称と登録番号
②取引年月日
③取引内容
④税抜き金額または税込み金額を税率ごとに合計した金額
⑤④に対する消費税額および適用税率
⑥請求書の受領者の氏名又は名称
具体的なイメージとしては下記の通りです。
①の適格請求書発行事業者の氏名又は名称は、「屋号」によって記載しても大丈夫です。
⑤の消費税額は
・税抜き金額×10/100(8/100)
・税込み金額×10/110(8/108)
のいずれかで計算し、複数の商品について一つの商品ごとに端数処理をすることはNGです。
あくまで税率ごとに合算をしてから、その合計額に対して消費税額を求めます。
(端数処理は切捨て、切上げ、四捨五入などは任意です。)
上記の記載事項がきちんと網羅されているか、が重要ですので、
・様式に制約はありませんし、
・手書きで作成しても問題ありませんし、
・納品書や請求書の複数の書類で記載事項を満たしていれば問題ありません。
また現実には、すべての取引で請求書や領収書があるわけではありません。
<そもそも領収書が発行されないケース>
交通機関は?
⇒3万円未満であれば帳簿への記載のみでOK
自販機での買い物は?
⇒3万円未満であれば帳簿への記載のみでOK
従業員への通勤手当は?
⇒帳簿への記載のみでOK
<適格簡易請求書(簡易インボイス)で可能なケース>
中古車屋さんが個人から買い取るときは?
⇒その個人のインボイス登録番号記載がなくても領収書と帳簿への記載のみでOK
不動産業者が個人から建物を買う場合は?
⇒その個人のインボイス登録番号記載がなくても領収書と帳簿への記載のみでOK
この適格簡易請求書とは、不特定多数を取引先とする事業を想定されているもので、記載事項は下記の通りとなります。
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称と登録番号
②取引年月日
③取引内容
④税抜き金額または税込み金額を税率ごとに合計した金額
⑤④に対する消費税額または適用税率
適格請求書との違いでいえば、
⑥であった相手先の氏名等は、不特定多数のため記載が省略できるほか、
⑤において
・適格請求書では消費税額および適用税率
となっているのに対して
・適格簡易請求書では消費税額または適用税率
となっています。
したがって、適格簡易請求書では、
・消費税額だけ
・消費税率だけ
・消費税額と消費税率の両方
のいずれかの記載方法となります。
具体的には次のようなイメージです。
相手先の氏名・名称を記載する必要がないので、
ほとんどの場合は既存の請求書なり領収書に登録番号を記載すれば対応できるのではないでしょうか?
適格簡易請求書を発行できる業種は下記の通りです。
インボイス導入ガイド④~課税事業者がやるべきこと~
2021-08-19
テーマ:消費税
すでに課税事業者(消費税の納税義務がある事業者)である場合は、自社がインボイス発行事業者に登録することのデメリットはないでしょう。
(発行する請求書や領収書にインボイス発行事業者の登録番号を記載できるようにシステムを改修する等の必要はあります。)
課税事業者にとってのインボイス制度のポイントとしては「免税事業者への発注」にあり、
その理由としては
・消費税の納税時には、受け取った消費税から支払った消費税を控除したい
・支払った消費税を控除するためにはインボイス(適格請求書)が要る
・インボイスは課税事業者(消費税を納める必要のある事業者)しか発行できない
・発注先の免税事業者が課税事業者を「あえて」選択してくれるか分からない
・もし選択してくれなかったら、わが社にとっては損(控除できるものが少なくなるので納税額が増える)。
という点にあります。
したがって課税事業者にとってまずやるべきことは、
・支払先のうちに、インボイス発行事業者にならなさそうな支払先が該当ないかどうか
・該当あるとすればインボイス発行事業者になるように促す
という点にあると思います。
どういうケースに注意すべきかと例を挙げますと、
・一人親方と言われる小規模な外注先が多いケース
・委託先に小規模な取引先が多いケース
・外注としての内職さんへの依頼が多いケース
・飲食店など交際費が多いケース
となります。
インボイス発行事業者になることを促すということは、その取引先さんに対して消費税の課税事業者となることを促すことを意味します。
その他、
盲点としては、例えば法人で、事業所を社長個人から借りていて社長個人に家賃を支払っているケースです。
この場合は、
・社長個人が課税事業者を選択してインボイス発行事業者になるか、
・社長個人に支払っていた家賃に係る消費税については自社において控除することを断念する、
の2択になります。
後者を選択したとしても、「インボイス発行事業者以外からの仕入れに係る経過措置」として
・R8.9.30までの支払い分は、その消費税相当の80%
・R11.9.30までの支払い分は、その消費税相当の50%
を控除することは可能です。
ただ、あくまで経過措置ですし控除できない部分も発生します。
したがって、インボイス発行事業者への登録をいくら促しても登録されないケースへの対応としては、
・その事業者への支払いに係る消費税は、納税額から控除しないとあきらめる
・インボイスを発行できる事業者へと取引を見直す
・消費税相当を支払わない(下請法で問題となる可能性あり)
となると考えられます。
その他、自社が発行するインボイスには何を書けばいいかは下記よりお願い致します。
8%の軽減税率が混在する場合の端数処理は「税率ごとの合計」で計算するのも実務上の留意点になるかと思います。
- 2024年4月 (3)
- 2024年3月 (2)
- 2024年2月 (2)
- 2024年1月 (2)
- 2023年12月 (3)
- 2023年11月 (2)
- 2023年10月 (5)
- 2023年9月 (1)
- 2023年8月 (4)
- 2023年7月 (2)
- 2023年6月 (5)
- 2023年5月 (3)
- 2023年4月 (4)
- 2023年3月 (2)
- 2023年2月 (4)
- 2023年1月 (4)
- 2022年12月 (3)
- 2022年11月 (7)
- 2022年8月 (1)
- 2022年7月 (2)
- 2022年6月 (2)
- 2022年5月 (3)
- 2022年2月 (1)
- 2022年1月 (3)
- 2021年11月 (2)
- 2021年10月 (1)
- 2021年8月 (9)
- 2021年7月 (1)
- 2021年6月 (2)
- 2021年3月 (1)
- 2021年2月 (3)
- 2021年1月 (2)
- 2020年12月 (4)
- 2020年11月 (3)
- 2020年10月 (4)
- 2020年9月 (3)
- 2020年8月 (4)
- 2020年7月 (4)
- 2020年6月 (2)
- 2020年5月 (1)
- 2020年4月 (3)
- 2020年3月 (6)
- 2020年2月 (3)
- 2020年1月 (3)
- 2019年12月 (4)
- 2019年11月 (4)
- 2019年10月 (6)
- 2019年9月 (3)
- 2019年8月 (4)
- 2019年7月 (5)
- 2019年6月 (6)
- 2019年5月 (8)
- 2019年4月 (7)
- 2019年3月 (11)
- 2019年2月 (8)
- 2019年1月 (8)
- 2018年12月 (10)
- 2018年11月 (8)
- 2018年10月 (9)
- 2018年9月 (9)
- 2018年8月 (7)
- 2018年5月 (2)
- 2018年4月 (2)