税理士松尾ブログ
コロナ禍の実務。年末ごあいさつに代えて
2020-12-24
テーマ:経営を守る情報
先日、今年最後の弊社会報誌「礎」の送付を終えました。
そちらに寄稿させて頂いた文章に加筆したものです。
実務的な振り返りを年末ご挨拶と代えさせて頂き、その中で参考になる事項があれば幸いに存じます。
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年初に端を発したコロナにより、あっという間に年の終わりを迎えようとしています。
全国的な蔓延となりだした春先から、資金調達、財務改善、各種補助金・助成金、事業承継とりわけ株式の移転、など実務面もめまぐるしく動きました。
各項目ごとに主な論点を整理します。
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資金調達
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ポイント:総資産の額と内容を検証する
金融機関借入が増えて自己資本比率を低下させているケースが多く、再び自己資本比率を上げていくサイクルに戻すことが重要です。
そのためには利益の蓄積はもとより、在庫や債権の圧縮、不要資産の売却により総資産(貸借対照表の一番左下の数字)を減らすことも重要となります。
総資産の内容を検証することは、結果的には資金の流出を伴わずに節税につながることにもなります。
そして資金調達が出来たら有利子負債を借り換えてしまうケースもありますが、出来るだけ手元に置いておきたいものです。
このあたり、このあとにも書かせて頂く「必要キャッシュ量」を確認できているかがカギになります。
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財務改善
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ポイント:必ずと言っていいほどお客様と打ち合わせをした項目4つ
1.固定費の見直し
これはひとえに損益分岐点売上を確認する、さらに損益分岐点売上を下げるために他なりません。
改めて総勘定元帳をもとに各種経費の内容を見直しますと、不要な旅費、広告宣伝費、交際費、保険料などが浮かび上がりました。
また、損益分岐点を下げるには、固定費の見直しの他にも仕入れや外注などの原価率の引き下げも重要です。
いずれにしても、固定費または原価といった費目を見直し、「いくら売ればいいのか?」を検証していくことになりました。
2.標準保障の見直し
「1.」で固定費の見直しをすると、法人契約の生命保険の見直しにつながります。
医療保険を過剰に法人で掛けていたり、付き合いで入ったものがあったり、色々と出てきました。
まず、「原点」に戻ることが大切です。保険の原点、それは「保障」です。
金融機関借入が増えた今こそ、本当に保障が足りているのか、いったい自社はいくらの保障が必要な会社なのか、借入金残・固定費・死亡退職金の3つの側面から必要保障額を見直します。
3.手元キャッシュの見直し
資金調達環境が整っていたこともあり、手元キャッシュも膨らんだケースも多くあったように思います。
法人保険の必要保障額と同じように、いったい自社はいくらの手元キャッシュが必要な会社なのか、回収・支払サイト、そして固定費から割り出しました。
必要手元キャッシュを上回っている場合は、ピンチはチャンス、ということでコロナ禍でも積極的に投資に動く経営者も多かったのも事実かと思います。
4.資金見通しの確認
経営計画とまでいかないのですが、見通せる範囲での売上・経費の計画、今ある借入金の返済、税金の予定納税、減価償却を総合的に盛り込んで「最低1年」先の資金繰り予想をつくりました。
売上の予想なんて分からんよ、という場合でも、昨対○○%、でもいいのです。大切なのは数値に落とし込むことです。
飲食業など影響の大きなお客様については昨年対比○○%で3年先、というように何パターンも作成して検証します。
借入返済・予定納税等の全てを盛り込んで実際の数字で1年後の預金残高を見とおしてみると、取るべき策も根拠をもって取り組めるようになります。
いずれにしても、全ての根本は「月次試算表」です。
お客様をご紹介頂く多くのケースで、今の税理士事務所から月次がタイムリーに上がってこない、という声が聞かれます。
それでは話になりません。しかしどの会社様にもできること。諦めずに月次試算表を翌月に出す体制を構築することが全ての根本と言えます。
常々私どもからは、貸借対照表をもとにお話しをするようにしておりますが、固定費の見直しに見られるように、コロナ禍のような特殊事情下では「損益計算書」も非常に重要となります。
コロナ禍で調達した借入の返済原資は利益ですので、貸借対照表・損益計算書、両にらみで乗り越えていければと思います。
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各種補助金・助成金
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ポイント:助成金はともかく、補助金は会計事務所への丸投げはしない方がいい
特に重要な位置づけとなった雇用調整助成金については、あおば社労士事務所の方で対応させて頂いておりますが、今まで潤沢だった雇用保険の積立金も急減しているとのことですし、来年の3月以降は縮小される可能性が高いものと思われます。
しかしそれでも、雇用調整助成金の他にもキャリアアップ助成金等フル回転だったのが実情です。
一方で、追加経済対策として検討されているとされる事業再構築補助金の創設をはじめ、従来からのIT導入補助金などとあわせてコロナ禍における企業の「投資」への補助は継続される見込みです。
助成金は要件に当てはまれば必ず支給されるものですが、補助金は「申請して採択」される必要があります。
そしてその申請書は、数字の部分も若干ありますが、ほとんどはその設備をどのように使ってどのように効率が上がるのか、という本業の説明になります。
ここは頑張って原案を作って頂いた方がかえって早い、と感じているところです。
また、税務面でも、人件費が増大した時の所得拡大促進税制、オフィス機能を拡大する時の地方拠点強化税制などの「税額控除」も、支払う税金が安くなるという点で、助成金・補助金と同じ効果を持ちます。
オフィス機能を拡大する時の地方拠点強化税制は工事着工前に知事認可を得ておく必要があるので要注意です。
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事業承継・買い手としてのM&A
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ポイント:株の譲り受けに関して、後継者からのご相談が増えた
コロナの影響を受けているとすれば税務上の株価は下がることになり、結果として株式移転の良い機会となります。
株式の移転については3年計画など長期間のプランを組むことも多いのですが、今年の傾向としては、「今やっておかないと」ということで後継者側からのご相談が増えたように感じています。
事業承継は株に始まり株に終わります。そして事業を継がせる側の目の黒いうちの実行が重要です。
100社あれば100通りの事情があるので、自社の特色や背景を踏まえた上で着実に実行に移していきましょう。
また、秋以降は特に、買い手としてのM&Aのご相談を承ることが急増しました。
M&Aも株式の移動を伴うことが多いのですが、その株の値付けについては様々な手法が考えられます。
弊社としては、案件探しについては行政機関と連携してヒアリングさせて頂いてから動いています。
また、株価算定については公正な価値を士業の視点から検証をすることで対応をさせて頂いております。
経営者同士で値段を決めてくるケースもありますが、その場合はプラス面にスポットがあたって、リスク面が十分に考慮されずのケースが多々ありますので要注意です。
リスク察知については財務面は税理士、未払い賃金や各種賠償リスクなど法務面については弁護士の意見を募るようにして頂ければと思います。
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来年以降も
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年明け以降も続くコロナ禍においても、
・貸借対照表をチャートでご報告すること、
・そして資金繰り予定表でもって損益と資金の先行きを月次で管理すること
を中心に、反転攻勢のフォローをさせて頂ける体制構築に継続して取り組んで参ります。
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