税理士松尾ブログ
インボイスが不要な経費
2023-07-18
インボイス制度がこの秋からスタートし、インボイス番号の記載された領収書や請求書によってやり取りすることになります。
しかし例外的に、領収書や請求書にインボイス番号がなくても、その分の消費税を控除できるものがあります。
役員や従業員に支払う日当もまた、この例外規定に含まれています。
日当とはそもそも、
「旅費、宿泊費に含まれていない出張中の少額の諸雑費(食事代や通信費など)の支出に係る実費の弁償」としての性質を有します。
規程により全従事員を通じて公平性が確保されており、支給金額が実費弁償として相当の金額である限りにおいて所得税は非課税、法人税においても損金算入が可能です。
それに加えて消費税においても、、インボイス制度のスタート後も、その日当の額に含まれる消費税相当が、インボイス番号がなくても控除可能となっています。
各人ごとの日当の管理が大変ですし、あくまで実費弁償ですので多額の金額設定は期待できませんが、それでも積み重なることで税制面でもメリットが大きく、検討の価値ありだと考えております。
インボイスや電子帳簿保存と実務に大きく影響する改正を迎えるせいか、久々にセミナーが続きました。
あおばオンラインセミナーでは「税制改正対応。電子帳簿保存法」と題して
・R6.1以降の電子帳簿保存法の全体像
・中小企業でも手を付けやすいジャンル
・強制されるもの(電子取引保存)
・電子取引保存はなぜ強制されるのか?
・税務調査と電子取引保存法
といった内容をお伝えさせて頂きました。
随分と前の税制改正で電子取引保存が登場して以来、中小企業の実務を考えるとまだまだハードルが高かった電子帳簿保存法ですが、令和5年度の税制改正でようやく使える分野が出てきたな、との感触を持ったことから、企画をしてみました。
フリーアナウンサーの清水健さんのスタジオ(each stage)をお借りし、最後には清水さんからのご質問も交えて和気あいあいと。
そして和気あいあいと、とはいかなかったのが「奈良県神道青年会」の神主さん方をお相手にした「禊鎮魂錬成研修会」。
事前のテーマは特に伝えられておらず、税理士さんにお話しいただくのは初めてですのでお任せします、とのことでした。
それがまた逆に難しく、しかも聴衆は普段は別世界の神主さん方、、、汗
確かセミナーの講師を始めて務めたのは27歳くらいだったと思いますが、そこから思い返してもなかなか引き付けるのに苦労したセミナーでした。
石上神宮さま、貴重な修練の機会を有難うございました!
電子保存が義務化?
2023-06-21
来年度予算の基本方針である「骨太の方針」が公表されています。
安全保障体制を構築しつつ、若年層が本格的に減少する2030年代に入るまでに、基本的には内需拡大(人への投資、労働市場改革、こども子育て・投資拡大・GXDXスタートアップ)を図り、一人あたり生産性を向上させる方向性のように感じます。
具体策として一番最初に登場するのが「三位一体の労働市場改革」。
「1」リ・スキリングによる能力向上支援
・・・企業経由が主体の学び直し支援策の過半を個人経由にする
「2」企業の実態に応じた職務給の導入
・・・事例集のとりまとめ
「3」成長分野への労働移動の円滑化
・・・自己都合退職の場合の要件緩和(会社都合退職の場合は触れられず、、、。)と、退職所得課税制度の見直し
退職所得課税については、勤続20年までは一年あたり40万円が非課税となり、21年目以降は一年あたり70万円が非課税となります。
例)勤続21年の場合
20年×40万円+1年×70万円=870万円までが非課税
長く勤務すれば非課税枠が大きくなるところが疑問視されているのだと推察しますが、当然、役員退職金の水準設定にも影響してきますので、今後どのように制度設計がされるのか、以前から注視しているところです。
その他、
・賃上げ税制や補助金の強化をさらに検討
・最低賃金1,000円達成後の最低賃金引上げの方針についても議論する
・週20時間未満労働者への雇用保険適用拡大を議論
・中小企業向けの省エネ補助金の検討
・継続的な事業省再構築、生産性向上、事業承継の支援
(事業再構築、ものづくり、IT導入、事業承継の各種補助金)
・社会保険の適用拡大検討と年収106万円の壁を超えた場合の手当
が掲げられています。
その他、奈良県において「物価高騰対策」の流れで、賃金を引き上げた企業に対し「従業員数×5万円助成」の補正予算が提出されています。
県の資料では対象となる賃上げの時期について明示はありませんが、奈良新聞の記事によると「9月から来年2月までの間に基本給や時間給を1.7%以上引き上げた」場合とのことです。
やはり経営者としては社会保険の被用者拡大が気になるところ。
しかし、社会保険の加入よりも「手取り」を重視するニーズもあることは確かです。
例えば法人成りにともない、
・「給与扱いのものを外注扱いにしてほしい」という従業員側からの要望を受ける
・「外注扱いにしているけれど従業員と待遇はさほど変わらない」
というケースも依然として多いのではないかと推察します。
「給与か外注か」で税務面の手続や負担もかなり変わります。
そのような中、参照したい地裁判決(高裁でも敗訴)があります。
<背景>
・社保加入になるなら外注にして欲しいと従業員から申し出あり
・雇用保険から抜ける
・本人から請求書を発行してもらうようにした
・本人は「給与所得」ではなく「事業所得」として確定申告
<外注扱いとした後の実態>
・日当は変わらず
・翌月末払いのサイトも従業員時代と同様
・本人はその会社以外からの請負はしていない(専属)
・従業員時代と同様「寸志」も不定期に請求して受け取っていた
・簡易な道具以外は会社側にて支給
・本人の都合がつかない時は会社側が別の外注先を探す
・仕事が完成の対価ではなく日当として報酬を請求できる
要は、外注としての形式は整えていたものの、従業員時代と全く実態が変わっていないということで「外注費ではなく給与」とされ、結果、会社側において、
・消費税の納税負担が増え、
・源泉徴収もれ
を指摘されています。
インボイス制度も始まるため、外注扱いへの変更の頻度としては減少するのかもしれませんが、会社側としてはメリハリのある実態に即した運用が求められます。
最後に電子帳簿保存関係。
電子帳簿保存について、ソフトの紹介など各種の情報を毎日のように目にするようになっています。
「電子保存が義務化」の部分だけを強調したサイトも見かけるようになりました。
電子保存が義務化されることは間違った情報ではないのですが、義務化されるのはあくまで「電子取引の保存」についてのみであって、それ以外は任意適用になります。
そして適用を決めるに際しては必ず、
・使用ツールの費用対効果
・税務調査への対応方法
が関係してきます。
中小企業にとっては、義務化される部分は最小の費用若しくは費用をかけずに粛々と対応し、それ以外の項目については慎重に電子保存対応をしていくべきと考えています。
今一度、電子帳簿保存法が要請している保存要件について情報を整理すべく、オンラインセミナーを開催させて頂くこととしました。
7月5日16時から40分間で、
・電子帳簿保存法の4つのジャンル
・導入を決めるための判断基準
・税務調査と電子帳簿保存
・一番導入しやすいジャンル
・電子インボイスと電子取引
といった点について情報を共有し、自社にとって最適な電子帳簿保存法対応を考える機会として頂ければと考えております。
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