税理士松尾ブログ

松尾ブログ

節税の境目

2023-03-15

テーマ:経営を守る情報

先日、節税保険をうたうなど過度な募集行為が問題となっていた生命保険会社に対して、業務改善命令が下りました。

 

「節税」が行き過ぎると「租税回避」となります。

 

その境目は?

 

となると、「経営方針と手段との一致」が認められるかどうかだと思います。

つまり、何らかの経営目的があって生命保険を活用するのではなく、目的が節税のみ、となっている状態となれば節税の度を超していることになります。

 

事業承継の実務においても、ホールディング化、借入による不動産購入など様々な手段がありますが、そこに経営方針との一致が認められるかが重要な論点です。

 

特に法人契約の生命保険に関しては、商品開発と国税庁とのイタチごっこが長年続いており、そうした背景もあって、商品設計段階から国税庁に事前照会をかけるなど、国税庁と金融庁とが更なる連携を図ることとされています。

 

節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品への対応における国税庁との更なる連携強化について

 



法人契約の生命保険についてはとにかくシンプルに設計することが大切です。

契約時には記憶していても、戦略、日々の資金繰り、人事のことなど、経営に邁進していれば細かいことは忘れてしまいます。(少なくとも私は)

 

例えば、入院給付などの特約が付いているとして、仮に入院給付で保険金が会社に下りたとしても、それを個人へと還元する際には課税が伴います。

ゆえに、特約部分は個人への還元ではなく、その方が入院して居ない期間の運転資金対策として考える必要があります。

 

法人で生命保険に加入する目的は「保障」なのか「運転資金対策」なのかと明確に設定し、まずは原理原則通り「保障」の過不足を確認してシンプルに設計していかなければなりません。

 

実際に私どもが実務で携わる際には保障目的のものがほとんどで、その他は相続対策での一時払終身保険、といった具合です。

 



コロナで増えたことといえば、借入の他に「在庫」もあるように感じます。

【製造業の原材料在庫、3年で1.5倍 「持たざる経営」変化】

実際、こんな記事もありました。

 

記事にある製造業に限らず、幅広い業種で在庫量が増えている実感があります。

 

財務的には、現預金を増やし経営を守るためには「在庫と売掛を増やさない」というのがセオリーとしてありますが、現実には、販売機会を逃さない、サプライチェーンなど様々な事情から在庫量を増やさざるを得ない状況が生まれます。

 

その時の資金面の手当てとしては、「在庫の増加には短期資金で」という原理原則に立ち戻ることが重要だと思います。

 

短期資金の対照的な位置づけとして「長期資金」がありますが、長期資金とは「月々返済していくパターン」になります。

したがって、短期資金とは「長期資金以外のパターン」となりますが、具体的には当座借越や手形借入、資本性ローンなど、一定期間、返済を伴わない形での資金手当を指します。

 

在庫として眠っている資金を月々返済していくパターンで手当てしてしまうと、当然ながら手元資金を圧迫します。

在庫の増加局面では短期資金で手当てし、その後、在庫を販売して生まれた資金で短期資金の減少を図ることが重要です。

 

このことは在庫だけではなく、例えば医療・介護関係のように、制度上どうしても2か月後にしか入金がない業種の場合も、入金までの運転資金の手当ては長期資金よりも短期資金で手当てすることが望ましいと思われます。



 

そして、中小企業をめぐる「賃上げ」の波。

 

「次は中小企業の番」という風潮が強いのが非常に気になるところです。

 

いま稼働している原発の半数が関西電力管内ということもあってか、関西電力は電力の値上げ申請をしていないようですが、今後、他の地方で大幅な値上げ申請がなされていることを考えると、その風潮はますます強まるように思われます。

 

賃上げに関しては「所得拡大促進税制」ということで税制面からも手当てがなされています。

 

この制度は「税額控除」ですので、助成金・補助金のように「お金が入ってくる」のではなく、税金として「出ていくお金が減る」という形のため、手当されている実感がなかなか沸かないのも事実なのですが、効果としては助成金などと全く同様です。

 

税制改正があり、

・法人はR4.4.1〜R6.3.31までの間にスタートする事業年度

・個人はR5年度とR6年度

においては、

 

・役員を除きパートアルバイトを含む給与額が

・前年度と比べて

・1.5%増加していれば

増加額の15%が控除されます。

 

また、増加割合が2.5%以上であればさらに15%の上乗せ、研修を受けさせる費用など教育訓練費が前年比10%上増加していれば10%の上乗せがあり、最大40%の控除率となります。

その年度の法人税もしくは所得税の2割が控除上限というのがネックなのですが、適用できるときの効果は非常に大きいのも事実です。

 

法人税が発生する事業年度は人件費の増減に特に注意を払い、適用もれの内容に留意して頂ければと思います。



 

最後に「後継者塾」。

お陰様で募集開始から10日足らずで定員(5名)に達しました。

 

日頃から協業して頂いている士業(弁護士・弁理士・社会保険労務士)とともに、次代を担う「Next President」へ経営を守るための情報をお伝え出来ればと思っています。

 

 

マイ畑にも、春。

いいね 0
読み込み中...
最近の記事
テーマ
月別


ページ
トップへ