税理士松尾ブログ
今からインボイス対応が必要な理由
2022-08-10
テーマ:消費税
先日はお客様向けのインボイスセミナー、また最近は経営者団体や同業者団体など、インボイスのセミナー講師のご依頼を頂戴する機会が増えてきました。
(オンラインセミナーではフリーアナウンサーの清水健さまにもご登壇頂き、いろいろご質問を投げかけて頂きました。)
現在消費税を納めてらっしゃる「消費税の課税事業者」は、現在「免税の事業者」に対してインボイスを発行するよう、すなわち消費税を納める事業者を選択するよう要請をしていくこととなると思います。
免税事業者にとっては実務上、
「消費税を納める事業者を選択するか」
「免税事業者のままとし、消費税相当を受け取らないか」
のいずれを選択するか判断が必要になると思いますが、制度上はどちらの場合であってもある程度の配慮(激変緩和措置)は設けられています。
<課税事業者を選択した事業者への配慮>
・・・簡易課税制度の存続
売上とともに預かる消費税さえ把握しておけば納税額が計算できる制度で、恐らく多くの事業者にとっては納税額が有利に働く(実際に受取った消費税から払った消費税の差額よりも納税額が少なくて済む)と推察します。
したがって、インボイスを発行する事業者(消費税の課税事業者)への転換要請と併せて、「簡易課税制度の選択」も案内すると有用と思われます。
1,インボイス登録と併せて簡易課税制度も選択してもらう
2,自身の事業区分を確認してもらう
3,その年度で受け取った消費税×(1−事業ごとのみなし仕入率)で計算した消費税を納税してもらう
という流れになります。
事業区分は国税庁HPに記載の通りですが、たとえば、
材料支給を受け人工請求する工事業者・・・第4種
自身で材料仕入を行う工事業者・・・第3種(建設業)
となります。
<相手先が課税事業者を選択しなかった場合でも(今まで通り)消費税を合わせて支払った場合への配慮>
・・・経過措置
課税事業者にとっては、免税事業者へ消費税を支払ってもインボイスがないのでその消費税を納税額から差し引けないのですが、
・R5.10.1〜R8.9.30の期間は80%は差し引ける
・R8.10.1R11.9.30の期間は50%は差し引ける
措置が設けられています。
(その後は一切差し引くことが出来ません)
<課税事業者を選択した、しなかった事業者共通として>
いずれの場合であっても、インボイス対応を契機とした価格交渉があまりに一方的、形式的であれば「優越的地位の濫用」として独占禁止法上で問題となる可能性がある、とのアナウンスも公正取引委員会から始まっています。
現実には取引価格やどの業者に委託するかは事業者の自由であるというのが大原則ですし、消費税を払わないことが直ちに問題となるわけではありませんが、
・立場の強い事業者が弱い事業者に対して
・無理難題を押し付け、
・競争環境を阻害した
として(発注する側、受注する側の)双方にとって無用のトラブル対応に時間が割かれないよう今の時期からの声掛け、協議が重要です。
今回は消費税を現在は納めていない事業者との取引についての着眼点をまとめていますが、当然、消費税を納めている事業者ご自身にとっても「インボイスには何を書けばいいのか?」というような論点も存在します。
・消費税と本体価格は分けて表示する
・消費税は課税事業者に支払う
という基本原則をもとに、
・得意先(売上の相手先)との関係、つまり自社がインボイスを発行する事業者としてすべきこと
・取引先(支払の相手先)との関係、つまり自社がインボイスを受領する事業者として相手と協議すべきこと
の両面で今のうちから対応を実行に移していくことが重要です。
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