税理士松尾ブログ
円安は続くか?
2024-06-04
報道では上場会社を中心に、円安や値上げの効果で好決算の発表が続いており、実際に税収も増えております。
しかし、中小企業や一般消費者にとって、円安は基本的には悪影響が多いと思います。
今の円安をどの程度まで許容するのか、具体的な政策として打ち出しにくいのは分かるものの、そもそも是正すべきと考えているのか、政治の役割としてのメッセージ性が弱いのが非常に気になっております。
そんな中、少し前の話にはなりますが、円安是正の観点から「リパトリ減税」が検討されている、との話がありました。
海外子会社が利益を計上するものの日本国内に還流させない、という事態があるため、
海外子会社から本国へ還流時の税負担を軽減させるものです。
そもそも、円安を人為的に是正するためは2通りが考えられます。
1,為替介入
外貨準備でもって円を買うという取引ですが、財務省の資料によると、外貨預金は約25兆円。
それに対して先日、実は為替介入してましたということで公表された介入額は約10兆円。
外貨準備高から言っても、なかなか介入を連発しにくいのが現状です。
2,利上げ
こちらに関しては、国民経済や中小企業に甚大な影響があるためなかなか大胆には踏み切れない、、、。
ということで円安基調はしばらく続きそうと考えておりますが、先のリパトリ減税の他、これ以上の為替水準を許容しないため施策とメッセージがどこまで6月の骨太の方針に盛り込まれるのか、注視をしています。
円安の影響もあって、今年に入ってからというもの、中小企業の業況にさらに厳しさが増している感があります。
お客様にも、弊社内でも、
・さまざまな不確定要素に耐え
・経営をつなぎ雇用を守っていく
ためのバロメーターとお伝えしているのが「自己資本」の「金額と率(自己資本比率)」になります。
貸借対照表右下の下から2番目の数字です。
キャッシュ量は、
・借入を増やしたり
・回収サイトを早めたり
・支払いサイトを遅らせたり
すれば一時的に増加させることはできますが、自己資本は利益を積み重ねない限りは増加しません。
貸借対照表の左側には、自社の「資産リスト」が並びますが、その内の何%が自分のもの(税引き後利益の積み重ね)か、を示すのが自己資本比率になります。
先日、中小企業庁から「令和5年中小企業実態基本調査速報」という統計が公表されていますが、そのアンケート資料によると、中小企業の自己資本比率の平均値は「41.71%」。
弊社の月次試算表でも、その表紙に、まずは50%を目指しましょうと記載させて頂いております。
そして社長ご自身が株主なのであれば、自己資本の額は社長ご夫婦にとってもう一人の子供なんですよ、と。
地域経済を守っているのは中小企業。
円安・人材不足・資源制約など厳しい経営環境を克服するためにも、自社の自己資本比率の定点観測を欠かさず、予算実績管理、月次業績管理を進めていければと考えております。
(ご参考)
以前にフリーアナウンサーの清水健さんとYouTubeで対談させて頂いた際にも自己資本のことに触れております。
6月初旬。
夕方になると「寒っ」と感じたら認識即行動ですぐに焚火とバーベキューの巻。
ホールディング化が事業承継に使える理由
2024-05-13
テーマ:事業承継
連休中、
・昨年11月に帝国データバンクから公表された調査レポート
・先月、日本商工会議所から公表された事業承継に関する実態アンケート
に目を通しました。
事業承継において、内部昇格によるケースがはじめて親族内承継を上回ったようです。
内部昇格のケースのほとんどは親族外承継であり、さらにM&Aのケースを加えると、過半数が既に親族外承継になっていることになります。
実際、弊社でお手伝いをさせて頂くケースでは、そのほとんどは親から子、といったような親族内承継です。
しかし、先ほどのレポートやアンケートからは、その親族内承継がほとんどを占める現状に変化の兆しが見て取れます。
商工会議所アンケートの10ページにあるように、いまの経営者自身が親族外であるという比率が、その経営者が就任して10年以内の場合に3倍近くに跳ね上がることから、外部承継がここ数年のうちに急増しているということであり、少子化の中にあっては尚更その傾向は強まるものと考えられます。
そんな状況下、長期的な視野から承継をスムーズに進める対応策として考えているのがホールディング化です。
株の承継者は創業家、事業の承継者は(第三者も含めて)門戸を広く、として所有と経営を分ける点に大きな特徴があります。
また、複数の事業を展開する場合や、事業会社が賃貸物件を所有(オーナー家由来の不動産がある)しているケースにも、ホールディング化は非常に親和性が高くなります。
弊社でも導入事例が少しづつ増え、ノウハウも蓄積されてきました。
実際、弊社(税理士法人あおば)自身が第三者への親族外承継でバトンを繋いできており、税理士法の制約から税理士業はホールディング化はできませんが、もし出来るとすれば私もやっていると思うのです。
基本的にホールディング化するために資金拠出は必要なく、反対に、所有(株主)と経営(社長)を別にするからこそ、ホールディング会社(親会社)における、創業家による憲章や経営理念の重要性が際立つようになります。
創業者や創業家の歴史そのものがそのホールディンググループにおける強烈な個性であり、その絶対性こそが重要です。
事業承継における大きなテーマとして「後継者を誰にするか?」のほかにもう一つ、「税務上の株価」がありますが、ホールディング化することで結果として株価の上昇スピードを抑える効果も期待できます。
歴史をたどれば、ホールディング会社(持ち株会社)は、戦後において解体され設立が禁止されていたものですが、平成に入ってその設立が解禁され、その流れを汲んで税務上も組織再編コスト(再編時の課税)が大幅に軽減され今に至ります。
導入の環境が整い、実際に弊社お客様、すなわち地方の中小企業者においても導入事例が増える中、中小企業で導入した場合に起きてはならない事態(リスク)は何か?
それは親会社と子会社が霧散すること、ではないかと思います。
ホールディング化が進めば、
・親会社の経営陣は創業家
・子会社(事業会社)の経営陣は第三者
という形態になる可能性がより高くなります。
しかしそれが理由に何らかのきっかけでグループが霧散してしまうことも充分に考えられます。
ホールディング化により経営陣に第三者が入ることになりますが、一方で、日本においては長寿企業が多い要因の一つに、同族企業・ファミリー企業が多いことがその秘訣にあります。
したがって、
・ホールディング化により、これからの舵取り役を第三者も含めて幅広く募り、経営を守ることのできる態勢
・一方でファミリー企業としての絶対的な理念や歴史
という両者の利点を組み合わせることがむしろ必須であると思います。
よって、
・親会社においてはグループ経営理念や創業家の歴史の共有
・事業会社である子会社の資産負債は事業に直接関係のあるものに集約する
ということが重要と考えています。
事業承継関係のセミナーでも必ず申し上げることですが、事業承継は百社百様、オーダーメイドでしか解決しません。
ホールディング化はあくまで手段ですので、オーダーメイド策を考慮する際は、
1,今後どのように経営していくか?
2,ホールディング化のメリットデメリット
の順番が逆転することのないよう念には念を入れた上で、さまざまな選択肢を模索していく必要があります。
そんな弊社も第三者承継を経て20年。
お客様と提携業者様向けにイベントを企画しています。
9/6。
奈良県コンベンションセンターで講演会のあとは隣のJWマリオットホテルで懇親会。
士業や社員も増えておりますので、改めてお披露目を出来ればと思います。
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