税理士松尾ブログ
失敗の本質
2024-08-07
今年から新たに入社してくれている若手社員には月に一冊、私の独断と偏見で今まで印象深かったビジネス書を課題図書としてお渡しするようにしています。
来週からもまた新たに2人の若者が来てくれますが、最初はちょっと戸惑うことでしょうけれど、こちらもめげずに継続していきます(笑)
これまでお渡しした書籍には、稲盛和夫さんの書籍や、奈良市立一条高校の校長だった藤原和博さんの書籍、福沢諭吉さんの学問のススメなどジャンルは様々です。
今後、課題図書とするかもしれない書籍リストの中に、経営学者の野中郁次郎氏の名著である「失敗の本質」という書籍があります。
そこでは、旧日本軍の分析を企業経営に投影する試みがなされています。
「失敗の本質」の中で旧日本軍の失敗の本質は「環境に適応しすぎた」ことにあると結論づけられています。
企業は環境適応業と言われることを考えると、逆説的な結論です。
旧日本軍の場合、特定の戦略を突き詰めすぎて自己否定ができず、また、自己否定ができる仕組みも構築できず、パラダイム、つまりはそもそもの「ものの見方」を変えることが出来なかった、という分析になります。
コロナ禍による行動制限が解かれたこともあり、ここ最近は起業される方も多くなっていますが、起業後、月々で試算表が出るようになると、弊社のチャート式試算表にある「損益計算書の原則」の話題になります。
そこでは、利益獲得の順序として
1,固定費
2,変動費
3,客数増
4,単価増
の順で検証していきましょう、と記載しています。
起業間もなくてもそうでなくても、自己否定と原理原則を忘れることなく経営にあたらねばなりません。
特に固定費については、「パーキンソンの法則」というものがあります。
これは、もともとはイギリスの政治学者が行政機構を研究する中で見出した法則のようですが、人や企業に置き換えることもできると思っています。
【支出は収入に達するまで膨張する】
人でいうなら、収入が増えれば増えるほど生活費の水準もまた上がってしまう。
企業に置き換えるなら、売上が増えるにつれて原価(仕入・外注・運送費用など)が上がるのはある程度やむを得ないものの、交際費や消耗品などそれ以外の固定費も上がってしまう、といったところかと思います。
コロナ禍のような不況期は当然として、
・コロナ禍が明けても収入が思いのほか戻らない
・集中的な投資がひと段落した
・売上が順調に伸びつつある、、、等
どんな場合であっても、今、原点に戻って固定費の見直しに着手されるケースが多々あります。
収入が増えるにつれて費用も増えるのであれば、収入を増やすのではなく資産を増やさねばなりません。
設備、人材など収入を増やす資産を増やし続ける意識が重要となります。
内部的には、決裁権(その経費を払っていいか)と予算化の両輪により、パーキンソンの法則などはね返していきたいところです。
真夏の夕方6時半。
西日が照らす三輪山と散歩中の私。
諸行無常。あおばらしく。
2024-07-19
テーマ:
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毎年末の税制改正大綱は必ず目を通すほか、
税制改正大綱とともに、毎年6月の骨太の方針、そして5年に一度の年金制度の健康診断である財政検証もまた、要注目の資料として捉えています。
7月の連休、ようやくという感じで7月3日に厚労省から公表された「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」レポートを読みました。
メディアでも報道がありましたが、年金の受け取り額に着目した記事が多く、年金の特別勘定(積立金)に触れた記事はどこか少なかったように感じます。
例:年金水準「経済成長なら6%減、横ばいで2割減」 政府試算(日経新聞)
しかし実際のレポートを見るとけっこう衝撃的、、、。
まず試算の前提として30パターン以上が用意されていますが、今より出生率が上がる場合や高成長率を実現した場合、と現実的ではないものが多く、
一番現実的なのは
・出生率が低位
・経済成長率を過去30年の実績を投影
のケースかと思います。
そうなると、130ページを超すレポートではありますが、肝心なところは
・P36、37:機械的に給付水準の調整を進めた場合
・P39、40:所得代替率50%を維持した場合
となります。
特に後者の「所得代替率50%を維持した場合」には、国民年金の積立金は2095年に底をついてしまいます。
厚生年金の方も、2095年に今の半分以下の水準まで落ち込んでいます。
しかも、今後しばらく毎年16.4万人の外国人が入国超過で、その人たちも厚生年金保険料を負担するという前提条件のもとで、、、。
今は円安で、積立金の運用をするGPIFの運用益が多額に計上できた、というような記事も散見されますが、その運用原資である積立金自体が激減する格好です。
下部に記載のある「完全な賦課方式」というのは、年金給付の原資を積立金の運用によらず、「保険料と国庫(税金)」のみで賄うことを指しますので、給付を維持しようとすれば保険料を上げるか増税か、というのが当然の流れです。
年金財政は「100年安心」という名のもと、5年ごとに100年計画を見直していく方針で、2019年の前回から円安で少しは改善されているとはいえ、財政的な懸念は残されたままと言えます。
厚生年金保険料を負担する個人として法人として、何ができるか深く考えて行かねばなりません。
そんな中、中小企業でも十分に活用できる、企業版確定拠出年金制度(DC)は有用であると考えており、このブログを書いている今日も、お客様1社が導入を決められました。
そして、6月の下旬には「骨太の方針」。
現政権を象徴するかのような、非常に曖昧で総花的な表現が多く散りばめられたものになった感があります。
経営者の皆様の「経営の出口」に対する課税である退職所得への課税方式につき、2023年の骨太の方針には「見直しを行う」と断言する表現があり懸念していたものの、結局のところ2024の今回は「税体系全般の見直しを推進する」との表現にとどまっています。
一方、個人的に着目していたライドシェアも期限の明示なく「議論を進める」との言及のみで、最終的にはトーンダウンするという点においては同様の結果になったものと見受けられます。
国家財政として円安メリットを享受している今だからこそ、規制緩和に踏み込んでおかなくては、と思うのですが、、、。
その他、中小企業に関連するものとしては
・最低賃金につき、全国加重平均1,004円になったことを踏まえ、2030年代半ばまでに1,500円を目指す
・短時間労働者への被用者保険の適用拡大、ならびに、常時5人以上の個人事業所の非適用業種の解消について2024年末までに結論を得る
・教育訓練給付の給付率の引き上げ(70%から80%へ)
・教育訓練休暇中の生活を支えるための新たな給付金の創設
・リ・スキリングの対象に経営者を追加
・中小企業を念頭においたマッチングプラットフォームを20204年度中に運用開始
といったものが挙げられます。
資金繰りについては「コロナ禍以前の水準に戻す」と明記され、事実、柔軟に使えた「伴走支援」と呼ばれるコロナ借換保証は先月末をもって終了しました。
※セーフティーネットの前提となる認定時の緩和要件(売上減少等を実績のみで判断せず見込みの要素も入れることができる)は継続される模様です。
また、2023年の骨太の方針には「中小企業等の事業再構築・生産性向上・円滑な事業承継の支援」と記載があり、それに対応する制度として「事業再構築補助金・ものづくり補助金・IT導入補助金・事業承継補助金」があり、活用頻度が高い制度となっています。
しかし今回の2024年版にはそういった表現がなくなっており、これら今まで身近だった補助金の継続性にも注意を払っておかなければなりません。
やはり、中小企業庁としてメインと位置付けているのは、過去にも取り上げた省力化投資補助金で、先日受付も開始されました。
参考:新設。省力化投資補助金
一様に、中小企業にはなかなか厳しい、もしくは影響の少ないものであるように感じます。
円安は中小企業と一般消費者にはマイナス。今こそ地域に根付いた専門職ワンストップサービスを、
ということで7月1日は恒例の経営計画発表会。
「諸行無常。あおばらしく、挑戦する勇気をもって進んでいきましょう。」
↑
経営計画書(松尾よりメッセージ)より抜粋。
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