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【法人税】損金算入基準

 

税理士試験は毎年8月に実施されますが、2020年度試験を受験された方々、お疲れ様でした。そして、2021年度試験を受験される方々、またこれから1年間コツコツと頑張っていきましょう!

 

 

さて、今回のテーマは法人税法における「損金」についてです。

 

ポイントは3点、

・「損金」という言葉は税務上(法人税法上)の言葉で、会計でいう「費用」とほとんど同じ意味であるが、

必ずしも一致はしない。

・「損金」と「費用」が一致しない理由は会計と税務の目的の違いにある。

・「損金」と「費用」が一致しない場合は、法人の所得金額計算の際、調整が必要になる。

です。

 

それでは、説明していきます。

 

「会計」と「税務」の世界がある

まずはじめに押さえていただきたいポイントは、税理士事務所が日々行う業務の中には、「会計」と「税務」という二つの世界が存在するということです。

「会計」・・・一定期間の利益を計算するための一連の手続き。

貸借対照表や損益決算書といった財務諸表の作成等。

「税務」・・・一定期間の課税所得を計算するための一連の手続き。

税務申告書の作成等。

 

実務は、会計→税務の流れで行います。

それぞれの世界で使われている言葉は異なりますが、意味はほとんど同じです。

 

  • 「会計」・・・収益費用という言葉を使い、当期純利益を求めます。

●「税務」・・・益金損金という言葉を使い、所得金額を求めます。

 

当期純利益も所得金額も会社の儲けであり、両者はほぼ一致します。しかし、会計と税務の目的の違いにより、一致しないことがあるのです。

 

 

「会計」と「税務」の目的の違い

その目的の違いとは、会計が「適正な期間損益計算」を目的にしているのに対して、税務は「課税の公平」を目的にしているところにあります。この目的の違いにより、会計上は費用に計上出来ても、税務上は損金に計上出来ない。またその逆で、会計上は費用に計上出来なくても、税務上損金に計上出来るということが生じ、結果、当期純利益と所得金額が一致しない、ということが生じてくるのです。

 

 

 

損金とは?

それでは、今回のテーマである「損金」とは何か?

 

条文には

 

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 

とあります。

簡単にいうと、「①原価、②販管費、③損失」の3つです。ちなみに会計における「費用および損失」については、「①売上原価、②販管費、③営業外費用、④特別損失、⑤法人税、住民税および事業税」の5つに区分されます。

上記の「損金」の額は、特別な定めがない限り、「一般に公正妥当な会計処理の基準」に従って計算します。

法人税法においても会計的な事実の発生に基づき、収益と費用を対応させることにより認識しますが、その費用に関しては、

  1. 売上原価は売上高との「個別対応」により、
  2. 販管費は発生した期間に対応する「期間対応」により、
  3. 認識するということ、
  4. 損失は発生事業年度にそれぞれ損金の額に算入される

ということを頭に入れておく必要があります。

 

加えて、②販管費の「期間対応」について法人税法では、「償却費以外の費用で債務の確

定しないものを除く」とされています。このように債務の確定した費用に限り損金算入を認めることを「債務確定基準」といいます。

債務確定基準により、法人税法が特に定める場合を除き、債務の確定しない費用については損金算入が認められないのです。

債務の確定とは、その事業年度終了の日までに、

  1. 債務が成立していること
  2. 具体的な給付をすべき原因事実が発生していること
  3. 金銭を具体的に算定できること

という3つの要件すべてに該当することをいいます。

 

ちなみに 益金とは?

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

 

→収益のことです。1回目、2回目で解説していますので、今回は割愛させていただきます。

 

 

長々と説明しましたが、法人税法における「損金」と会計における「費用および損失」は、会計と税務の目的の違いや損金に算入出来る要件の違いにより完全には一致しませんので、次に説明する法人の所得金額を求める際に調整が必要となってくるのです。

 

 

法人の所得金額を求める流れ

法人税は下記の計算式で求めます。

 

課税標準である所得金額 × 税率 = 納付すべき法人税額

 

ですが、この計算をするためには、まず課税標準である所得金額を求めなければなりません。では、所得金額はどのようにして求めるのでしょうか?

条文には

 

内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

 

とありますので、

ということです。

 

ここで一つ疑問が・・・

結局、会計でいうところの「収益-費用=当期純利益」とどう違うの?

ということですが、ほとんど違いはありません。ポイントは、会計上の収益・費用をそのまま税務上の益金・損金として認識出来るかどうか、です。

 

ですので、実務上はわざわざ益金の総額から損金の総額を引いて所得金額を算出するのではなく、会計をベースとした当期純利益に益金・損金として認識出来るか出来ないかといった一定の調整(プラス・マイナス)を加えて誘導的に算出することとしています。

 

 

なぜわざわざ調整をしなければならないのか?

会計も税務も一緒でいいじゃないか

なんと面倒で、ややこしい・・・。会計も税務も一緒でいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、ここで先に説明した「課税の公平」という概念が出てきます。

 

具体例を挙げると、交際費等や寄付金があります。

交際費等とは、得意先、仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます

そして、寄付金とは、金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。

(交際費と寄付金の違いについては、ゆくゆくのあおばstudyで詳しく解説します!)

税務上、交際費も寄付金も一定額までは損金となりますが、限度額を超えたところからは損金とならない損金算入限度額が定められています。

これは、上限なく交際費や寄付金の損金算入を認めてしまうと、多額の交際費や寄付金を計上して所得金額を少なくし、不当に税負担を免れる可能性があるためです。

「課税の公平」という観点から損金に算入できる項目や金額には制限が設けられていることが、所得金額を算出する際に調整が必要となる要因の一つとなっているのです。

 

 

損金=費用とならないケース

実際のところ、会計上の費用と税務上の損金が不一致となるケースは限られています。

代表的なものには以下があります。

 

  1. 役員報酬・賞与(損金算入可能な要件を満たしていないもの)
  2. 交際費・寄付金(限度額超過額)
  3. 法人税・法人住民税(法人事業税等、損金算入出来るものもあります)
  4. 減価償却超過額

 

各項目の詳しい説明については、また別の回でご紹介します。

ほとんどの費用については損金として計上することが出来ますので、上記のような不一致となるケースについては少しずつ覚えていきましょう。

 

以上、損金についての概要をご紹介しました。

費用をすべてそのまま損金に計上していると、正しい所得金額の計算が行われず、後々、税務署から問い合わせが来ることがありますので、正確に経理処理を行い、適切な節税対策を行っていきましょう。

 

なお、税務判断は事例ごとに個別具体的に行う必要がございます。
本記事に掲載されている情報を基にご自身でご判断、処理された事項については、弊社では責任を負いかねますので、ご了承くださいませ。

 

<参照>

・法人税法第22条(e-Gov

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000034#302

 

・大原の法人税法テキスト

・やさしい法人税申告入門 令和2年申告用

 


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