税理士松尾ブログ

松尾ブログ

納税猶予制度の申請件数が急増。

2019-04-07

テーマ:事業承継

平成30年4月。

税制調査会長いわく、「日本の経営者平均年齢を今の60歳台から40歳台に下げる」べく大胆な税制措置として、

自社株を贈与する際の「納税猶予」制度が施行されて1年が経ちました。

 

・2023/3/31までに経営承継計画を提出して

・2027/12/31までに一括で贈与すれば

納税が100%猶予される、というものです。

 

申請が急増しており、昨年12月の1か月だけで特例承継計画の提出が全国で499件。

 

私どもも事業承継スキームのご提案業務が増えており、

必ず選択肢の一つに挙がるスキームになりました。

 

この制度のリスクは大きく2つ

 

「猶予の取消しリスク」

猶予されていたものの、それが取消された場合には利子税とともに一括で納めなけばなりません。

そして

 

「遺留分侵害リスク」

事業承継の大原則は「1対1」。

誰か一人が株の贈与を受けますので、他の相続人様の相続の権利を犯してしまうリスクです。

取り消し事由にはまだまだたくさんあります。

 

遭遇しやすい取消事由の一覧

・5年以内は守らないといけない事由や
・後継者の一生涯、守らないといけない事由

 

がたくさんあります。

慎重に、慎重に、選択しなければなりません。

 

恐らく、

特例承継計画は、認定申請までは(後継者すら)変更可能だから

 

「とりあえず出しとこう」というケースも多いのだと思います。

 

私どものお客様にも、

納税猶予制度の活用が検討に上がることがありますが、

先に挙げた「2つのリスク」を慎重に検討して頂いているところです。

 

 

とくに遺留分の侵害リスクの検討を始めると、どうしても時間がかかってしまうのが現実です。

 

 

現場実務では、

市町村や金融機関からこの制度を勧められた、というケースもあります。

 

これは事業承継コンサルの扱えるテーマではなく、

あくまで「税務」です。

 

 

たんに制度自体の説明だけではなく

この制度について「解釈」をしてから活用するのが筋ではないかと思います。

 

なぜなら「経営の出口」に関することですので。

 

経営者にとって、

事業承継における最大の論点
「株の移転」だと思われます。

 

日ごろは

「役員(社長)としての自分」を意識しておられると思いますが、

「株主としての自分」を意識することは少なくなりがちで、

その移転に関しては後回しになりがちです。

しかしながら、

成長戦略を描いたとしても、相続や贈与で株を移転するときは必ず訪れます。

・株の集約
・株の分散
・名義株
・従業員など少数株主の権利

といった株主戦略を確認する機会を設けておりますので
どうぞご参加くださいませ。

詳細

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遺言の本質

2019-02-03

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

民法改正と事業承継の機運により遺言がますます身近になりつつあります。

 

そもそも遺言って何のためにつくるの?

遺言の一番大きな効果は?

 

遺言を書いても

遺留分(各相続人に最低限保障された権利)を侵害していれば

権利を侵害した分は意味なくなるんじゃないの?

 

という声も確かにあります。

 

遺言の効果としては

・想いを伝えることができる

・どの財産を誰に、という意思表示が出来る

 

というメリットをイメージしがちです。

そしてその通りだと思います。

 

 

ただ個人的に、本質的な効果としては

「望ましくない相続人の相続分を、遺留分まで下げることが出来る」

という点にあるように思います。

 

遺留分は法律で確保された権利だから、そこまでは仕方ない。

でも裏を返せば、

望ましくない相続人からそれ以上に要求されることはない。

 

という効果。

 

 

じゃあ望ましくない相続人がいないのなら必要ないのでは?

 

とくに事業承継の現場ではそういう訳にはいきません。

 

 

事業承継の現場では、どうしても後継者に相続させなければならない財産(自社株や事業用不動産)

があります。

 

そして詳細はセミナーに譲りますが、民法だけではなく恐るべき会社法の規定もあります。

 

 

「望ましくない」というのは兄弟仲が悪い場合を指すのではなく、

 

・会社経営を継いでくれる人がいて、

・一方で会社経営にはまったく関わっていない相続人もいて、

・でも自社株式など、後継者に必ず渡さなければならないモノがある場合、

 

などをイメージしています。

 

 

つまり、

 

・いくら兄弟間の仲が良かったとしても、

・いくら財産を平等に分割したくても、

・自社株とか事業用資産の都合で、平等にならない場合です。

 

 

弁護士(あおば綜合法律事務所)とともに

「事業承継。まずは株式だけでも遺言を、と申し上げる理由。」セミナーを開催する予定です。

 

私どもの提唱する「託し託される事業承継」では、

事業承継はまずは「分け方」から。

ホームページ

 

それが一番難しいねん。。。っていう声も聞こえてきそうですが、大丈夫です。

 

 

何から手をつけていいかわからない、という声が良く聞かれる事業承継の世界ですが、

 

「行動」に直結するファーストステップを法的な面から解説する予定です。

案内開始までしばらくお待ち下さい。

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全損タイプの法人保険

2019-01-30

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

昨年末くらいからでしょうか。

こんな話題がチラホラとでています。

 

「全損タイプの法人保険 見直しへ」

 

・支払った保険料が全額損金となり

・10年くらいで解約すれば

・8割以上が戻ってくる

 

そんな保険は商品としての妥当性を欠く、

 

として金融庁から保険各社に適切な対応を求める声が上がっている、

とのことです。

 

保険料を上げるとか解約返戻金を下げるとかの対応が求められるわけで、

その改訂が入るのが「3月前後」という説があります。

 

もし正式に見直し決定があれば、2月くらいに保険各社による駆け込み販売

予想されます。

 

そもそも、全損商品をなぜ販売するのか?

 

ということを考えた場合、「節税効果」が挙げられることが多いです。

 

あとあと戻ってくるのに損金になる、というのですから節税になると思いがちです。

 

ただ、

・決算間近になって、

・利益が出ていて、

・このままでは税金がかかる!

 

となった場合でも、私どもでは全損の保険商品をお勧めすることはありません。

 

理由は

・節税にならないから。

・手元キャッシュを守る必要があるから。

 

 

保険で節税という場合、有名な手法が

「解約返戻金が入るときに退職金を支給して節税」というのがあります。

 

これも、「退職所得控除」という税制面のメリットを活かしただけで、

退職金の支給財源さえあれば、

生命保険に入っているかいないかは節税効果に何の関係もありません。

 

個人版で有名な手法として

「保険料相当を贈与して相続対策する」という手法もあります。

 

これも、「一時所得」の計算構造を利用しただけです。

 

 

今後もし、この全額損金の保険商品について正式に見直しが入ったとして、

その上でもし、駆込み販売があったとしても

冷静に対処をしなければなりません。

 

保険には「節税」とは別のメリットがたくさんあります。

 

簡単に挙げると

・保障(当たり前ですが)

・課税の繰り延べ

(ただし単純返戻率が100%を超えない限り損失は発生。

その場合はその損失で保障を買ったと割り切る。。)

・遺言の効果を発揮する(遺産分割協議の対象にならない)

・保険料相当を贈与して受贈者に加入させる場合は、受贈者がむやみに使ってしまうのを防げる

・生命保険の相続税の非課税枠を使えば節税効果

遺留分対策(事業承継の現場でこれから超重要になる)

 

私たちのミッションである「お客様の笑顔」のためには必要な手段であることは間違いありません。

 

 

だから単純に「保険で節税!」ではなく、

 

退職所得控除や一時所得、生命保険非課税枠などの税金の計算構造とセットにすることで

節税効果が生まれるのであり、

それって保険うんぬんではなく単なる税制上のメリット、

という事実は押さえる必要があります。

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ガソリン代や贈答品代は不動産収入の経費か?

2019-01-13

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

これから確定申告を迎える方も多いと思いますが、

最近の国税不服審判所の裁決事例に下記のような事例がありました。

 

会社役員のAさん

 

貸している土地があり、確定申告もしている

 

不動産収入に対する経費に

 

・ベンツとダイハツハイゼットのガソリン代
2年分で約21万円

・中元歳暮の贈答品代、飲食代などの交際費
3年分で約22万円

 

経費計上

 

ガソリン代については、この車を使って管理業務をしていたと主張するものの、
裏付けとなる証拠は示せず。

審査請求となった時点で初めて「現在の走行距離の計算書」を示すのみ。
⇒当然、調査対象の年の実績でないから取り上げられず。。。

 

中元歳暮も送り先は明示するものの、それが業務と関係あるかどうかの裏付けは示せず抽象的と判断。

 

結局、
必要経費計上を、とした審査請求は棄却

 

そもそも何をこんなにモメてるんだと思いつつも。。。

 

裁決書の全文を読むと他にも争点がありますが、

いずれにしても不動産収入に対する必要経費に関しては、収入との関連性が疑問視されやすい項目ですので、

 

・たとえ見た目は良くなくても(メモ書きでもOK)
後回しにせず(これが一番大事)
・収入との関連性を記録しておく

 

ことが大切だと改めて感じます。

経費性のあるものであれば、
その時に(記帳も含めて)僅かでも証拠を形成しておけば経費算入も出来たかもしれません。

 

このケースは、

経費性の説明の仕方に誠意がなく、記帳もずさんだったんでしょうかね。。。

 

いずれにしてもこのケースは、

平成24年分から平成26年分の期間の申告に対して
終結は平成29年までズレこんでいるようです。

2年も3年も経ってから経営者自らが経費の説明に追われる、
というのは時間の浪費に思えて心苦しくてなりません。

 

不動産収入のある方は、

収入と経費の関連性に注意しながら

適時に(後回しにせず)記録して、

常に前向いていきましょう。

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自筆証書遺言の要件緩和

2018-12-16

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

事業承継に関して、

私どもでは「託し託される事業承継」

という概念を推奨しています。

 

単なる引継ぎではなく、

「損得」の関係をこえて「価値観の一致」した関係性を目指す、

「託す」という価値観です。

そこには5つのステップがあって、

1,分けかた
2,議決権の設計
3,納税資金
4,節税
5,成長戦略

の順となります。

やはり一番先に決めるべきは
「分けかた」の部分で、自社株は○○、自宅は○○、預貯金は均等に、

などというようにざっくりでも分け方を描いてみることです。

そこでは「遺言」が非常に重要な位置を占めます。

そして遺言のうち自筆で記す、

「自筆証書遺言」が格段に使いやすくなります

簡潔にいうと、

自筆証書遺言に添付する財産目録は自書じゃなくてもOK
(パソコンでつくってもOK)

ということになります。

2019年1月13日以降の作成分から改正民法が適用となります。

事業承継の最初のステップを、大きく後押しする効果があると思います。

 

遺言となるともはや税理士の範疇ではなくなってくるのですが、

 

そういった士業の垣根がなくなることを見据え、

「経営を守る」という「価値観を一致」させた

「奈良ASPO(アジア士業共同体)」を組成しています。

 

事業承継は企業の雇用を守ります。

雇用が守られるということは地域経済が守られるということです。

先人から受け継いだ地域を士業を通してお役立ちすることを

強く願っています。

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「事業承継とM&A」セミナー

2018-12-12

テーマ:セミナー報告事業承継

 

95回目の「あおばセミナー」は、

「事業承継とM&A」と題して開催しました。

 

私どもとしては

「託し託される事業承継」というネーミングで、

 

 

単なる損得の一致(Win-Win)を目指すのではなく

価値観の一致した事業承継を実現していただきたく、

 

 

事業承継を

5つのステップに分け、

18個のツールを使って

 

託し託される関係性を構築して頂きたいと考えています。

 

実際のところ、中小企業のM&Aは

・親族承継

・親族外承継

・M&A

 

3択になります。

 

 

・M&Aって身売りでしょ?

・息子がいたら関係ないでしょ?

・業績が悪くなってから考えればいいでしょ?

・世間体が良くないでしょ?

・統合してもうまくいかないでしょ?

 

まずはそんな誤解を説くことを目的とし、

事例を中心にご紹介させて頂きました。

 

また、M&Aはそれ自体が目的ではなく、

あくまで切り口は「事業承継」です。

 

私どもも親族内承継がベストだと思っています。

 

 

しかし実際には

 

・親族は大企業に就職して戻ってこない

・連帯保証には気が引ける

・業績やが芳しくなく、継がせる不幸

 

というケースも往々にしてありますし、

 

後継者にとっても

 

・創業者を超えられないジレンマ

 

があります。

 

 

その解決策の有効な一つになるものと思います。

 

その他にも

買い手としてのM&Aのニーズも高まってきており、

30代ですとか、特に年齢が若めの経営者さまからのご相談が実際に増えています。

 

M&Aの仲介業者や仲介サイトは日本に浸透しきった感がありますので、

この点でも「士業」の信頼性をもとに

託し託される関係性の実現を目指していきたいと思います。

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徐々に身近になってきたM&A

2018-12-05

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

中小企業の事業承継は実際のところ、

・親族承継

・親族外承継

・M&A

3択になります。

 

事業承継を切り口に色々とお客様ごとに

シミュレーションをしていくと、

 

身内に後継者がいる、いない。

後継者本人のやる気がある、ない。

後継者がいないとすれば、幹部に候補者はいるか、いないか。

 

いずれにしても後継者と目される人が連帯保証まで

覚悟を決めているか、いないか。

 

その方のご家族の覚悟のほどはどうか。

 

覚悟があるとしても、後継者に株を買い受ける財力はあるか、ないか。

 

株を買い取る財力があったとしても、そもそもその業界の先行きはどうか。

変化を起こす行動力はあるか。

 

そんな行ったり来たりを繰り返しているうちに、

意外と「M&A」に行きつくことがあります。

 

 

事業承継は最初で最後の経験。

後継者の指名は経営者固有の権利。

手を付けない理由はたくさんある。

 

それでもやらねばならない事業の承継。

雇用の承継

 

私たちも「フィルター」となるべく、

 

恒例の毎月第一土曜日の研修会で

 

年商数百万からのM&A成功事例を共有しました。

 

 

圧倒的な売り手市場のM&Aの世界。

 

つまり、買い手に対して

圧倒的に売り手が不足している状況。

 

3年連続営業赤字。

債務超過。

それでも成功した事例あり。

 

私も、先入観を捨てねば、と思い直しました。

 

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教育資金の一括贈与の非課税制度

2018-11-21

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

「教育資金」を一括で贈与すれば1,500万まで非課税

 

という教育資金の一括贈与に係る非課税特例は

今年度末(H31.3.31)に期限を迎えます。

 

 

この制度のポイントは次の通りです。

 

・直系尊属からの贈与(祖父母・父母からの贈与)であること

・学校などへの入学金、授業料等であれば1,500万まで非課税

・学習塾やスイミングなど学校以外でも500万まで非課税

・金融機関経由で手続きをするので税務署への手続き不要

 

そして、気を付けないといけない盲点は次の通りです。

 

・あくまで一括の贈与であること

・もらった側が30歳になった時点で使いきれていなければその時に贈与税がかかる

・この制度を使わなくても、

そもそも(一括ではなく)必要な時に必要な金額を贈与する場合は贈与税は非課税であること

 

とはいえ、とくに相続税対策に急を要する場合は非常に有効です。

 

 

例えばお孫さんが6人いらっしゃって、

この制度を使ってそれぞれ1,000万づつ贈与するとしたら

6,000万もの資金を非課税で次世代へ移すことが出来ます。

 

 

そして、文部科学省からは、この制度の恒久化の要望が出されています。

 

しかしながら、その場合は報道にもある通り、非課税金額や所得面での制限が入る見込みです。

期限が切れて以降の動向は税制改正大綱を待ちましょう。

 

師走を控え、「生前贈与」に関するご相談を多く頂戴する時期でもあります。

 

節税面からはひとつの大きな選択肢と言えます。

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同族会社への貸付金を相続財産から除外できるか

2018-10-17

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

会社への貸付金(会社から見れば借入金)について、

 

東京地裁の平成30年3月27日裁決に下記のようなものがります。

 

・親が代表を務める会社に親が貸付けをしていた

 (約5,700万円)

 

・借り入れは昭和50年から徐々に発生

 

・親が亡くなる

 

・相続人(子)は、会社の経営にはノータッチ

 

・会社の決算状態も一切知らない

 

・会社の営業状況は改善される様子はない

(ほぼ借入金相当が債務超過)

 

・生前は毎月10万円ずつ返済

 

・返済は自分(親)が生きている間だけでよいと言われていた

 

 

およそ上記のような条件のもと、

貸付金5,700万円相当を相続財産に含めずに申告した事例です。

 

 

「返済は自分が生きている間だけでよいと言われていたこと」

をもって相続が発生した時点で債務免除されたものと主張するものの、

 

その主張も実らず。

 

また、「会社の経営状態が改善する見込みがないこと」

をもって相続財産に入れなかったと主張するものの、

 

それも実らず。

 

 

判決では、財産評価基本通達において、

 

相続財産に算入しなくてもよいケースとして挙げられている

 

「その回収が不可能又は著しく困難」なときとはどんな場合か?

という点について、

 

 

「債務者(会社)が経済的に破綻していることが客観的に明白」であること

を要求しました。

 

会社が破産等の法的手続きに入っているなど「客観性」が必要ということです。

 

 

会社への貸付金については、返済を免除すれば会社側で収益計上されます。

 

債務超過の状態で資本金に組み入れれば、こちらも会社側で収益計上される可能性が高いです。

 

 

まずは「債権の有無の確認」、そして計画的な返済・贈与による名義変更など、

 

こちらも事業承継にあたっては重要テーマとなります。

 

 

ほとんどの日本の企業が今まで経験してこなかった

「事業承継」という問題。

 

本当に論点が多岐にわたります。

経営者と後継者に、本当に信頼できる伴走パートナーが必要です。

 

 

将来、相続税を払うのは後継者。

 

後継者も他人ごとではすまされません!

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そもそも退職金ってなに?

2018-10-14

テーマ:事業承継経営を守る情報

 

事業承継のご提案にあたって

「退職金」の支給時期

 

・スキーム選定

・株価

・とうぜん、税負担

・登記

・会社組織

・個人の相続対策

 

などなど多岐に影響を及ぼします。

 

 

事業承継がまだしばらく先だとしても、

 

例えば生命保険の加入にあたってその目的を「退職金資金」に、といって加入されるケースも多いはずです。

 

金額も大きくなりますし、

一生に一度のことですし、

経営の出口のことですので、

 

そもそも退職金って何なのか?

 

ということを押さえておく必要があるように思います。

 

 

法人税法においては明確に規定をおいていませんが、

 

 

まず所得税法では

 

・退職(勤務関係の終了)を起因とする

・従来の継続的な勤務への対価の一部後払い

・一時金として支払われていること

 

3つが要件となります。

 

まあ、当たり前のことです。

 

 

で、

 

 

法人における「役員退職金」についての争点をみますと、

 

1,役員がその法人を退職したことで初めて支給され、

 

2,役員としての在任期間中の継続的な職務執行への対価の一部の後払いとしての性質を有しているか、

 

という論点が最も重要となります。

 

 

ざっくり一言集約して申しますと、

 

「ほんとうに辞めているか?(職務が激変しているか?)」

 

 

ということになります。

 

 

例えば、ただ代表取締役から取締役に登記が変わっただけで、いまだに対外的にも影響力を行使している場合には「退職していない」ものとされる可能性があります。

 

 

その場合は「退職金」ではなく「賞与」となり、所得税はかかるけれども損金算入できない、といったことになりかねません。

 

 

・後継者が単独で判断できるようになるまで相談役として経営に関与している

 

・一定額を超える支出の決裁者である

 

・対銀行など資金繰りの窓口役をつとめている

 

・後継者に相談なく多額の費用の支払いを決定している

 

・仕入について購入するかどうかの承諾をしている

 

・取締役会に出席して人事給与の決定に関与している

 

・高額の資産取得に関与する

 

などの実態が認められると、登記上は代表者から外れているとしても「退職していない」ものとされる可能性があります。

 

 

退職金は金額(多いか少ないか)のことばかりがクローズアップされがちですが、

 

退職金の支給時期の問題は、経営への関与の仕方にストレートに影響してくる項目です。

 

 

事業承継にあたっては非常に大きな論点となるでしょう。

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事業承継はまずはテーブルにのせることが大切。

2018-09-12

テーマ:事業承継

過去のメルマガから反響の高かったものを抜粋します。

2018/7/9の記事です。

 

 

※※※※※※※

 

 

税理士の私から見ても

事業承継の現場への影響が大きいだろうな、

と思える「民法」の改正案が審議中です。

 

早ければ2020年からの施行になります。

なかでも、経営者の方におさえておいて頂きたい大きな改正点は
2点

 

①遺留分侵害額が金銭債務になる

 

自社の株式を後継者に相続させた結果、

他の相続人様に最低限保障された権利である

「遺留分」を侵害してしまうケースがあります。

 

 

今は、侵害されたという請求があれば、財産が「共有」の状態となってしまい、

株式も分散させてしまうことになります。

 

 

改正案では金銭で支払えば済みます。

 

 

スピーディーな分割に役立つ一方、
後継者にとってのキャッシュの重要性がますます増します。

 

 

そこには生命保険の活用余地もあるでしょう。

 

 

②遺留分の対象に含める生前贈与を相続開始前10年間に限定

 

 

今は、生前贈与について、過去何年もさかのぼって

特別な利益として遺留分を計算し、

権利を主張することが出来ます。

 

 

ここに、過去さかのぼることが出来るのは過去10年という限定が加わります。

 

 

早めの事業承継・生前贈与の重要性がますます増します。

 

 

※※※※※※※

 

という記事でした。

 

 

遺留分の計算対象に含めるのは

 

3年?

7年?

期限なし?

 

という風に現場実務でもいろいろとご質問がありますが、

今は制限なし、のところが10年になるかもしれない、

というのが実情です。

 

 

今の経営者がお元気だからこそ着手が遅くなりがちな事業承継。

特にモノ(自社株式や資産)の承継。

 

 

一度テーブルにのせる、というのが大切です。

一回のせたら、また仕舞ってもよろしいのですから。

 

 

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納税猶予を受ける前に「必ず」やるべきこと

2018-08-26

テーマ:事業承継経営を守る情報

税理士法人あおばの松尾潤です。

 

納税猶予制度が改められ、

自社の株式について、

2027年12月31日までであれば

実質的に無税で贈与することができるようになりました。

 

 

非常に革命的な制度ですが、

これを使う可能性があるのであれば必ず確認しておくべき

と思うことがあります。

 

 

それは
後継予定者の「役員登記」

 

 

贈与時点で就任から3年以上経っていなければなりません。

相続税について納税猶予を受けるのであれば、相続の直前に役員になっていなければなりません。

 

 

株価が高くなっている企業様においては特に、

いまは修行中の後継予定者が○年後に帰ってくるから・・・

という状態の時は「役員就任」も併せて視野に入れておくべきだと思います。

 

 

万一突然に相続が起こってその時に役員登記していなかった、

となれば納税猶予はテーブルにすら乗らない、ということです。

 

 

この点はあまり、というよりもほとんどアナウンスされていませんし、

 

 

税法以外のことでも、
他にも

・株券発行会社になっていないか
・遺留分を担保できる保険の手当てはされているか

などあまりにも論点が多い制度です。

また、今はあまり株価は高くなくても

 

低い株価のうちに一括して後継者に贈与しておくことも選択肢の一つです。

 

 

今回の納税猶予制度は期限が区切られているからこそ

「後継者の役員登記の時期」にはご注意ください。

またセミナーもさせて頂く予定です。

 

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