税理士松尾ブログ
インボイス導入ガイド⑤~適格請求書の様式~
2021-08-19
テーマ:消費税
インボイスは「適格請求書」と言いますので、記載すべき事項が決められています。
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称と登録番号
②取引年月日
③取引内容
④税抜き金額または税込み金額を税率ごとに合計した金額
⑤④に対する消費税額および適用税率
⑥請求書の受領者の氏名又は名称
具体的なイメージとしては下記の通りです。
①の適格請求書発行事業者の氏名又は名称は、「屋号」によって記載しても大丈夫です。
⑤の消費税額は
・税抜き金額×10/100(8/100)
・税込み金額×10/110(8/108)
のいずれかで計算し、複数の商品について一つの商品ごとに端数処理をすることはNGです。
あくまで税率ごとに合算をしてから、その合計額に対して消費税額を求めます。
(端数処理は切捨て、切上げ、四捨五入などは任意です。)
上記の記載事項がきちんと網羅されているか、が重要ですので、
・様式に制約はありませんし、
・手書きで作成しても問題ありませんし、
・納品書や請求書の複数の書類で記載事項を満たしていれば問題ありません。
また現実には、すべての取引で請求書や領収書があるわけではありません。
<そもそも領収書が発行されないケース>
交通機関は?
⇒3万円未満であれば帳簿への記載のみでOK
自販機での買い物は?
⇒3万円未満であれば帳簿への記載のみでOK
従業員への通勤手当は?
⇒帳簿への記載のみでOK
<適格簡易請求書(簡易インボイス)で可能なケース>
中古車屋さんが個人から買い取るときは?
⇒その個人のインボイス登録番号記載がなくても領収書と帳簿への記載のみでOK
不動産業者が個人から建物を買う場合は?
⇒その個人のインボイス登録番号記載がなくても領収書と帳簿への記載のみでOK
この適格簡易請求書とは、不特定多数を取引先とする事業を想定されているもので、記載事項は下記の通りとなります。
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称と登録番号
②取引年月日
③取引内容
④税抜き金額または税込み金額を税率ごとに合計した金額
⑤④に対する消費税額または適用税率
適格請求書との違いでいえば、
⑥であった相手先の氏名等は、不特定多数のため記載が省略できるほか、
⑤において
・適格請求書では消費税額および適用税率
となっているのに対して
・適格簡易請求書では消費税額または適用税率
となっています。
したがって、適格簡易請求書では、
・消費税額だけ
・消費税率だけ
・消費税額と消費税率の両方
のいずれかの記載方法となります。
具体的には次のようなイメージです。
相手先の氏名・名称を記載する必要がないので、
ほとんどの場合は既存の請求書なり領収書に登録番号を記載すれば対応できるのではないでしょうか?
適格簡易請求書を発行できる業種は下記の通りです。
インボイス導入ガイド④~課税事業者がやるべきこと~
2021-08-19
テーマ:消費税
すでに課税事業者(消費税の納税義務がある事業者)である場合は、自社がインボイス発行事業者に登録することのデメリットはないでしょう。
(発行する請求書や領収書にインボイス発行事業者の登録番号を記載できるようにシステムを改修する等の必要はあります。)
課税事業者にとってのインボイス制度のポイントとしては「免税事業者への発注」にあり、
その理由としては
・消費税の納税時には、受け取った消費税から支払った消費税を控除したい
・支払った消費税を控除するためにはインボイス(適格請求書)が要る
・インボイスは課税事業者(消費税を納める必要のある事業者)しか発行できない
・発注先の免税事業者が課税事業者を「あえて」選択してくれるか分からない
・もし選択してくれなかったら、わが社にとっては損(控除できるものが少なくなるので納税額が増える)。
という点にあります。
したがって課税事業者にとってまずやるべきことは、
・支払先のうちに、インボイス発行事業者にならなさそうな支払先が該当ないかどうか
・該当あるとすればインボイス発行事業者になるように促す
という点にあると思います。
どういうケースに注意すべきかと例を挙げますと、
・一人親方と言われる小規模な外注先が多いケース
・委託先に小規模な取引先が多いケース
・外注としての内職さんへの依頼が多いケース
・飲食店など交際費が多いケース
となります。
インボイス発行事業者になることを促すということは、その取引先さんに対して消費税の課税事業者となることを促すことを意味します。
その他、
盲点としては、例えば法人で、事業所を社長個人から借りていて社長個人に家賃を支払っているケースです。
この場合は、
・社長個人が課税事業者を選択してインボイス発行事業者になるか、
・社長個人に支払っていた家賃に係る消費税については自社において控除することを断念する、
の2択になります。
後者を選択したとしても、「インボイス発行事業者以外からの仕入れに係る経過措置」として
・R8.9.30までの支払い分は、その消費税相当の80%
・R11.9.30までの支払い分は、その消費税相当の50%
を控除することは可能です。
ただ、あくまで経過措置ですし控除できない部分も発生します。
したがって、インボイス発行事業者への登録をいくら促しても登録されないケースへの対応としては、
・その事業者への支払いに係る消費税は、納税額から控除しないとあきらめる
・インボイスを発行できる事業者へと取引を見直す
・消費税相当を支払わない(下請法で問題となる可能性あり)
となると考えられます。
その他、自社が発行するインボイスには何を書けばいいかは下記よりお願い致します。
8%の軽減税率が混在する場合の端数処理は「税率ごとの合計」で計算するのも実務上の留意点になるかと思います。
インボイス導入ガイド③~免税事業者がやるべきこと~
2021-08-19
テーマ:消費税
免税事業者(消費税を納める必要のない事業者)にとってインボイスとは、
兎にも角にも「消費税を納める事業者になることを自ら選択するかどうか」という点にあります。
免税事業者はインボイスの発行事業者(適格請求書発行事業者)への登録申請自体ができないというのがその理由です。
選択の判断基準としては、
ご自身の事業において
・販売先(顧客)が一般の生活者のみであり、
・自分が発行した請求書や領収書が事業活動に使われる(会社で経費精算時に使われる、等)ことはない
のであれば、あえて課税事業者(消費税を納める事業者)を選択してインボイス発行事業者に登録する必要はないことになります。
しかし、それ以外の場合は、消費税を納める事業者を選択するということは消費税相当の増税となりますので、
やるべきこととしては、
・年間通しておよそ「預かっている消費税がいくら」で「支払っている消費税がいくら」かを計算して納税額を把握して備える
・課税事業者の選択とともに簡易課税制度の選択を合わせて検討する
ことが必要となります。
簡易課税制度とは、「支払っている消費税がいくら」という部分について、実際の金額によるのではなく、売上の金額に応じて簡易的な割合で計算が可能、という制度です。
簡易的な割合とは、下記の通り業種ごとに「みなし仕入率」として定められています。飲食業は「第4種」事業です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
特にみなし仕入れ率の低い「飲食業、運輸業、サービス業、不動産業」は、もともと経費があまりかからない事業ですので、簡易課税制度を選択した方が有利になるケースがほとんどかと思います。
あるサービス業者が売上900万円であるとすれば、
・預かった消費税は90万円、
・支払った消費税は90万円の50%(みなし仕入率)である45万円
・したがって、納税額は90万円マイナス45万円で45万円
というのが簡易課税制度による場合の納税額計算のイメージになります。
また、登録申請をしたからといってすぐにインボイスを発行できるわけではなく、
・R5.10.1のスタートからインボイス発行事業者となるためにはR5.3.31までに登録申請書を、
・その後は課税事業者になろうとする年の初日の1か月前までに登録申請書を
税務署長に提出することとなります。
インボイスの登録事業者となりインボイスを発行するとなれば、その記載事項とか新たな論点は出てきますが、免税事業者にとってはまずは冒頭の「消費税を納める事業者になることを自ら選択するかどうか」の検討に集約されるのではないかと思います。
8%の軽減税率が混在する場合の端数処理は「税率ごとの合計」で計算するのも実務上の留意点になるかと思います。
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